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安定を求める中国の大卒者

JILPTのトピックです「安定を求める中国の大卒者」

「新卒者は国営/中央企業を好む割合が最も高く、72.6%に達した。次に、政府機関/政府系事業組織が34.6%で、外資系企業は33.8%であった。不安定な経済環境のなか、求職者が安定性を優先する傾向が顕著に見られる。就職する際に重要だと考える要因については、「給与・福利厚生」が83.3%と最も重視されており、次いで、「キャリアの展望と昇進機会」が75.7%で、「安定性(64.0%)」、「企業の実力と規模(53.2%)」なども上位にあがった」と述べている。

この記事の参考情報として、 https://ww.199it.com/archives/1653783.html

 

事例)キヤノンの人材開発と社内講師養成の 取り組み

(引用事例)キヤノンの人材開発と社内講師養成の取り組み

JILPT『ビジネス・レーバー・トレンド21年5月号』

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2021/05/022-025.pdf

以前より研修の内製化にこだわってきたキャノン様の事例です。

内製化の理念と制度がしっかりしています。同時にこれは内製化は中途半端にはできないことを示しているといえるでしょう。

 

 

能力開発、人材育成の問題は?

厚生労働省の「能力開発基本調査」の結果が報じられた。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00105.html

企業を問わず十分な能力開発の経費も投資も十分には行われていないという結果となりました。しかも、それはこの10年間大きく変化していない。

平成3年のコロナ禍における調査のわりには、調査項目の数値があまり低くなっていないのは、周囲の実感と乖離しているようにも思える。

この調査の踏み込みが甘いところは、

①「能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は76.4%となり、4分の3以上の事業所で能力開発や人材育成に関する問題がある」としながら、②問題のある事業所に、その問題点の内訳を尋ねる質問にある。

結果は以下の通り。

はたして、この選択肢に回答者が選びたい問題があるのだろうか?

言いたいことが別にあるように思えてならない。

 

 

 

「知ること」のレベル

「知ること」にはレベルがある。

金井、高橋(2004)『組織行動の考え方』( 10章)では、次のように述べられている。

1)知ることとは、自分の中を通った手持ちの情報が一時的に増えること(フロー)

2)知ることとは、自分の知識ベースに変化が起こること(ストック)

3)知ることとは、その気になればそのことを他の人に教えることができること

4)知ることとは、知る前と知った後で世界の見え方が変わってくること

5)知って本当に理解することとは、自分が変わること

6)知って身につくということは、その知識を使って怖がらずに、自分や自分が属するシステムを変えてみようとすること。

このレベル6の論理の対偶にあたる表現は「システムを変えようとすることなしに、本当に役立つ知識は得られない」となる)

これはアクションラーニング、組織変革、SECIモデルなどの議論につながり、最近流行りのアジャイルやデザイン思考にもあてはまる。 これは研修業界やコンサル業界の核心概念になるはずだがこの知識を身につけている人は意外に少ないのかもしれない。

両利きの経営、逆輸入の可能性

最近はやりの『両利きの経営』では、”「改善」と「イノベーション」は両立できず、簡単にイノベーションはマネジメントできない”としている。経営書のヒットからもわかる通り、「うん。そのとおり」と思われた方も多いのではないか。

これに対し、岩尾俊兵は「そもそもイノベーションは結果であり、その取り組みこそが改善というプロセスではないか」とし、イノベーション・マネジメントの可能性を次のように述べる。

一般的に、改善は現場作業者中心の小さな活動の成果の積み上げであり、それはインベーション活動ではないと思われている。

しかし、仮に改善の9割がそのような既存の改善概念の範疇にあるとしても、残りの一割がもし大規模イノベーションにつながるような工程改善や開発、事業のサプライチェーンに影響を与えるものであるとするならば、経営者はそれを見逃すべきではない。問題解決の連鎖は、大きなイノベーションにつながる可能性がある。

考えてみれば、イノベーションの種を見つけた時にそれを実行できる組織であるかどうかは、全員参加型の小さな改善活動に慣れ親しんでいる組織であることが重要な要素になり得るのではないか。

つまり、改善活動はイノベーションを発生させること寄与するのだ。やっていたのですよと。でも、その果実を得るにはもちろん工夫が必要だ。

岩尾は、完成車メーカーの調査研究から改善活動から大規模イノベーションにつなげるために必要なこととして、以下をあげる。

・イノベーションに対するビジョン

・改善をイノベーションをつなげる人材の確保

・それを実行する組織の設計

・イノベーションまでに到達する長い道のりに必要な時間を許すこと

さらに岩尾は、経営者は1割りでも1%でもそれがイノベーションへつながるなら現在の改善活動の点検が必要だと訴える。

外国から新しく意味づけられ、輸入された経営ワードに飛びつくには注意が必要だ。日本的経営が逆輸入されていることもある。それは抽象化やコンセプト提示が苦手な我が国の弱みを示してもいると岩尾は指摘する。

平成生まれの若手学者この指摘=情念に、平成を生きた産業人はどのように応えるのか。

 

2022年2月25日東大アウトリーチ企画 MERC丸の内院生ラウンジ 岩尾俊兵(慶應義塾大学専任講師)『 イノベーションを生む「改善」』聴講より。

参考図書 岩尾俊兵『日本〝式〟経営の逆襲』 

企業メセナ アート・マネジメント

トヨタの企業メセナ「アート・マネジメント」支援のサイトがある。

https://www.nettam.jp/about/

1996年からトヨタは取り組んでいる。

https://www.nettam.jp/about/tam/publications/all/

当時、私はまったく関心がなかった・・・。

 

サイトには面白い記事が並んでいる。

https://www.nettam.jp/column/16/

「アートが何かの役に立つのではなく、アートにしかできないことをやろうとしている。月並みな言い方だけれど、アートが”多様性そのもの”であり、”正解”が存在せず、アイデンティティの”脱構築”を促すからに他ならない」

「解体されたアイデンティティは、アートによって生み出されたコミュニケーションによって再構築され、コミュニケーションとともに再解体される」

など、すでに組織内のダイバシティー議論そのものである。ヒントはありそうだ。

 

 

 

 

 

注目されるアート思考

イノベーションとは「社会に価値を持たらす革新」(エベレット・ロジャーズ)とされる。

現代のイノベーションは、近代で実現した科学者やエンジニアによる「技術の革新」だけに頼ることは限界があり、従来の論理思考だけも太刀打ちできない。そこで今、デザイナーやアーティストの潜在能力を活かすことが注目されているのだ。

従来の考え方、それは デザイナー(問題発見と解決)によるデザイン思考(創造的な問題解決)であり、これは、ユーザの不満を解消し便益を提供する方法である。しかしこの考え方から次のようなものを生み出すのことは難しいとされる。

例1)そもそも問題解決が価値創造につながらないもの

→扱いづらさに価値があるもの

例2)問題すら存在しないもの

→娯楽用品のように無くても別段困らないもの

例3)ユーザーがいまだ存在しないもの

→利用用途すら明確でない最先端技術の用途開拓など

そこで、

アーティスト(問題提起)によるアート思考(常識を揺さぶる、議論を巻き起こすこと)に注目が集まっている。

この思考は、常識外れのものや非現実的なものを生み出すことが得意で、問題解決が価値創造につながらないようなものも生み出すことができる。ただ、有用性の追求や全身的なイノベーションは得意ではない。そもそもデザイン思考とアート思考の志向は異なるのだ。

これが、アートの活動のイメージだとすると、その力を企業活動に取り込みイノベーションを起こすということになる。

 

引用・参考)森永泰史「デザイン思考とアート思考」日本経済新聞朝刊21年5月『やさしい経済教室』連載より

デザイン思考 Stanford  d.school

デザイン思考はユーザーイノベーションとは異なる。

ユーザーイノベーションの考え方は、「わざわざ企業がニーズを拾い上げてアイディアを考えなくても、ユーザーには少ないながらもアイディアの保有者が存在するので直接ユーザーにアイディアを尋ねればよい」というもの。したがて、

・優れたアイディアを持つところからそれは引き出すべき(リードユーザー法)

・特定のコミュニティ(ユーザー起動法)

・不特定ユーザーからアイディアを募ればよい(クラウドソーシング)

などがあるとされたきた。

他方、デザイン思考は「アイディアの源泉はユーザーの頭の中の未意識領域にあり、明確な答えを有しておらず、ヒントのみ有する」という前提に立っている。

したがってこちらが観察して、ヒントや答えをこちらが導き出す必要がある。しかもそれらは個々に違いがある。それら言語化できないニーズをどうやって浮かび上がらせるのかがポイントになる。

このプロセスは、スタンフォード d.school の「デザイン思考の5段階」などとして示されている。

1. 共感/理解

2. 定義・明確化

3. アイディア造り

4. プロトタイプ

5. テスト

「観察を通じて」ユーザーを理解することに、デザイン思考の特徴があるのだ。